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 紺色の上着を着た男を追っていたマキは、その姿を既に見失っており、これ以上追いかけても無駄、と足を止めた。
 気付かぬ内に城内の奥の方まで来てしまったのか、彼のいる場所は見慣れない所だった。
 前髪をかきあげながら溜息を吐き、レイニーを助ける方法を考えようと踵を返す。しかし彼を引き止める人物が現れた。

「失礼。貴殿はマハタック国の騎士殿と見受けられるが」

 声がした方に目をやると、近くに青銅の鎧に身を包む二人の男が立っていた。




03:真実の行方


 光が収まると、そこはカナムーン城の廊下だった。正しくは心配顔の兵士や魔道士たちが数人集まった廊下だった。
 全員が安堵の表情を浮かべたので、ようやく異空間から抜け出せた事を知る。
 わいわいと賑わう一同をよそに、レイニーは何気なく後ろを振り返った。
 背後の壁には光の魔法陣に封じられた一枚の肖像画があった。先程まで戦っていたものと同じ、明るい紫の髪をもつ男が描かれた肖像画。
 その絵には破られた痕があった。レイニー自身がつけた痕だろう。この絵は魔道士たちがきちんと処理するに違いない。

 レイニーは何時までもここに長居する必要がないので、マキを探そうと歩き出した。その瞬間、視界の端に映っていた肖像画の人物が、微かに動いた気がした。
 振り向いた時には既に遅く。

「――タナ!!」

 視界に赤い飛沫が舞った。


 黒髪の青年が左腕を押さえて、側にいたエルスの腕の中に倒れる。
 一瞬の出来事だった。
 肖像画の人物が動いたと思った瞬間、目に見えない速さでタナの左腕を剣が掠めた。
 人物像はケタケタと笑いながら肖像画に戻り、そして額縁ごと青緑の炎に包まれて姿を消した。

 浅くない傷を受けたタナは、すぐさま魔道士たちの回復魔法を受けた。お蔭ですぐにいつもの調子を取り戻す。

「エルス王子、マリアード様をお部屋までお送りしてもらえませんか?」

 銀髪の青年からゆっくりと離れながらタナが尋ねると、エルスは不思議そうに頷いた。

「構わないが、お前は?」
「僕は彼女にお話が」

 それだけ答えて、左腕の様子を確かめながら金髪の娘の元へ歩いていく。
 彼女の真正面で足を止めると、カナムーン式敬礼をした。

「お疲れのところ申し訳ありませんが、国王陛下にお会いしていただきます。――レイン王女様」

 穏やかさを微塵も感じさせない青年の様子に、その場に居た全員が黙り込んで様子を窺っていた。
 しかしレイニーだけは首を傾げてタナの顔を見つめ返していた。






 男は手に赤いボールのようなものを握り締め、森の中を全力で駆け抜けていた。街からは既に遠く離れている。
 前方に気配が生まれ、思わず足を止めて身を固くするが、その気配が良く知っている人物のものだと気付き、荒い呼吸を整えてニヤリと歪んだ笑みを浮かべた。

「貴女でしたか。見てください、これを!」

 目の前に佇む黒髪の女性に向かって握っているものを見せびらかす。
 ここからは影になっていて女性の表情は見えないが、向こうからはこちらがよく見えているだろうと続けた。

「これで少しはアビス様の為になれば良いのですが。何といってもあのサフランの――」

 男の言葉が途切れた。
 手から赤いものが転がり落ち、地面にぶつかった直後、弾けて消えた。
 ざわざわと木々がざわめく。
 男の身体は真っ二つに斬られていた。ザァァ、とその姿は灰と化し、風に乗って消えていく。

「――余計な事を……」

 風に煽られ、辺りに木の葉と黒い羽根が舞う。
 木々のざわめきよりも大きな羽音が森中に響き渡った直後、そこには何も残っていなかった。






 レイニーはタナに連れられ、カナムーン国王の執務室へやってきていた。
 マキの姿はない。
 マキの事を話すと、タナは兵士に彼を探すようにお願いしてくれた。これで取り敢えずレイニーは無事だと言う事はマキに伝わるだろう。

 国王陛下の執務室には樫で作られた大きな執務机が窓際に置いてあり、そこにカナムーン国王が腰掛けていた。机の横には黒髪の女性が立っており、タナはレイニーの後ろ、部屋の扉の隣に立っていた。

 ここに来るまでの間に、タナからざっと話を聞いていた。
 十五年前から行方不明の第一王子と第一王女の事。
 行方不明というのは世間向けの作り話で、本当は二人はワナルード山脈の麓にある、盗賊団薔薇(ばら)組に匿われているという事。
 三人の子供はタナの師匠が作った、魔力制御装置の金のイヤリングをつけているという事。
 そして第一王女はレイニーだという事を聞いた。

 レイニーはその全てを他人事のようにしか聞く事ができなかった。
 実際国王陛下に会っても実感が湧かない。
 「貴女は王女様です」と言われて、はいそうですか、と納得できる程、王族に憧れた事は一度もない。
 レイニーは様々な年齢層が集まる盗賊団で、毎日面白おかしく過ごすのが好きだった。

 王子と王女が盗賊団に預けられた経緯もタナから聞いた。

 今から十五年前、カナムーン国に魔族の軍団が現れたらしい。魔族の狙いは国王の三人の子供たちだった。
 三人揃えば膨大な魔力を生み出す子供たちは、人の魔力を糧にする魔族たちにとって最高の獲物だった。
 魔族は王宮騎士や王宮魔道士の力で撃退することは出来たが、またすぐにでも新たな部隊が現れるのは目に見えている。
 幼い子供たちは自ら魔力を制御する事も出来ないので、国王は断腸の思いで、子供たちが大人になるまで引き離して育てる事を決心したのだった。

 執務室に着いても、レイニーは何も言えなかった。自己紹介すらしていなかったが、この場にいる誰もが彼女を責める事はしなかった。

「楽にしなさい」

 国王が優しい笑みを浮かべて口を開く。その声にレイニーは強張っていた肩の力を抜いた。

「話は全て聞いたかね?」

 尋ねられ、レイニーは小さく頷いた。それを見て国王は笑みを深くする。

「ではここにいる理由が頭に入っていると仮定して、ひとつ頼み事をしよう」
「頼み事…?」

 ようやくレイニーは口を開いて首を傾げた。

「そう。同じイヤリングをつけている青年が盗賊団にいるはずだ。彼を連れて来て欲しい」

 その青年がカナムーン国第一王子なのだろう。
 レイニーは自分と同じ年くらいの仲間の顔を一人一人思い出していた。

「よくちょろちょろと城に来ていたから、名を聞いていた筈だが……」

 顎に手を当て、国王が唸りながら天井を見上げる。

「ライローグの右腕……たしか」

 そこまで聞いてレイニーの頭に一人の人物の顔が浮かび上がった。

「カレン=シューレン」

 青年の名前を口にし、レイニーはがっくりと項垂れた。





「人の事言えないけど、あいつこそ王子ってガラじゃないわよね……」

 ブツブツと呟きながら、レイニーは廊下を歩いていた。その隣ではタナが小さく笑っている。
 執務室を出てすぐに、兵士からマキが城門にいるというのを聞いて、タナに道案内をお願いして向かっている途中だ。
 国王陛下の頼み事はレイニーは素直に承諾した。国王命令というのもあるが、大きな理由は別にある。
 いくらこちらが陛下の子供という実感は無くても、向こうからすれば間違いなく陛下の子供なのだ。十五年振りに会えるというのなら、断る事は出来なかった。

「そのカレンさんって、どういう方なんですか?」

 笑いを収めてタナが尋ねる。
 盗賊団へは何度か所用で訪れ、カレンという人物も見かけたことはあるが、どういう人物なのかまでは知らなかった。

「どうって……絶対王子に見えないわよ。態度デカイし」

 態度のデカイ王子サマはメサム国にもいたな、とタナはレイニーの言葉を聞いて思い出していた。

「それにすぐ人の事を馬鹿にするし。口も悪いし」

 大体の人物像を作り上げ、タナは苦笑した。
 お国柄というより大陸柄、絵に描いたような立派な王子というのはどうやら存在しないらしい。

 ふとレイニーが顔を上げ、辺りをキョロキョロと見まわし始めた。
 どうしたのかとタナが尋ねようとする直前、レイニーが口を開いた。

「この曲……恋物語だね」

 遠くに聴こえる音楽に合わせて、レイニーが口ずさむ。

 彼女の言う恋物語は、世界的にも有名な劇の題名だ。
 一国の王女と平民の男が恋に落ち、最終的には二人は結ばれる事なく、離れ離れになるという内容だったな、とタナは思い出す。
 身分が違うという事実を知った男が王女の側から離れ、同じ平民の女性と結婚。それに気付いた王女が、彼の居ない人生は考えられないと自害する。
 次に生まれ変わる時は、同じ身分でいられるように、と遺して。

 そんな内容の劇の主題曲を、本日の夜会に参加する楽団が音合わせで奏でているのだろう。時折曲が何度も途切れていた。
 一番盛り上がるサビ部分が中々聴こえてこないのにモヤモヤとしているレイニーを見て、タナは思わず小さな笑みを浮かべた。

「今日の夜会に出席しては如何ですか? そこでなら一曲丸々聴けますよ」

 レイニーはこのカナムーン国の第一王女なのだから、夜会に出席しようと思えば出席できるし、希望すれば様々な音楽を聴く事も可能だろう。
 しかしレイニーは金の頭をブンブンと横に振った。

「あたしが夜会にだなんて無理…! 遠慮させていただきます」

 様々な仕事が出来るようにと、盗賊団で社交ダンスの練習もしてきたが、人前で踊った事は一度もない。例えタナやマキがダンスのパートナーになるとしても遠慮したい。
 何処となく残念そうにしているタナに悪い気もしたが、レイニーは少し歩く速度を速めた。
 前方に見慣れた人影を発見し、声を上げる。

「――マキ!」

 いつの間にか正面玄関を抜け、城門付近までやってきていた。
 門番と何やら話をしていた赤い服を着た茶髪の青年が、レイニーの声に気付いて片手を上げる。レイニーは手を振り返して駆け出す。そして彼の目の前でピタっと足を止め、勢いよく頭を下げた。

「心配かけてごめんなさい!」

 いきなり大声で謝られてマキは一瞬目を丸くしたが、すぐに笑みを浮かべてレイニーの金の頭を軽く叩いた。

「無事でよかったよ」
「これからは気をつけます」

 深々と頭を下げ、レイニーは顔を上げた。少し遅れてやってきたタナにマキが軽く頭を下げる。

「タナにも世話をかけたな」
「いえ、成り行きですよ」

 気にしないでください、と黒髪の青年は微笑んだ。

「マキ、盗賊団に行かないといけないんだけど……」
「え、今から?」

 恐る恐る尋ねてくるレイニーに驚いて聞き返すと、彼女はふるふると首を横に振った。

「今からじゃ遅いから、明日にでも行こうかと」

 レイニーは遅いと言ったが、まだ昼を過ぎてそんなに時間は経っていない。今から出れば夕方には十分辿り着ける距離だ。しかし今日は色々あって、既にクタクタだった。

「ああ、構わないよ」

 レイニーの頭を撫でながらマキは頷いた。
 「ありがと」と微笑んだレイニーはある事を思い出してタナに顔を向ける。

「そういえば、タナも行くの? 盗賊団」
「いえ、僕は仕事があるので行けません」
「そっか」

 王女の誕生日祝いの祭りは始まったばかりだから、きっと彼も大忙しなのだろう。引き留め続けるのも悪いので、レイニーは彼にぺこりと頭を下げた。

「それじゃあ、あたしたちはこの辺で。色々ありがとう」

 そう言ってレイニーが手を振り、マキと共に歩き出す。それを見届けてからタナは城へと戻っていった。






 次の日の朝。レイニーとマキは早速盗賊団薔薇組へと向かった。
 カナムーン国より西に位置する、大陸を縦断するワナルード山脈の登山口のひとつに盗賊団は存在した。
 いくつかの建物が立ち並び、盗賊団はちょっとした村になっていた。
 山から流れてきている川の側では女が数人談笑しており、広場では子供たちがはしゃぎ回っている。あちこちに修行用の罠の跡があったが、それ以外はいたって普通ののどかな村だった。
 盗賊団というのは名ばかりで、ここはカナムーン国とメサム国直属の組織の拠点だ。あまりののどかさに、そうは見えないが。

「レイニー、おかえりー!」

 子供たちが笑いながら二人の側を走り抜けていく。それに笑顔で応えながら、レイニーはひとつの屋敷に入った。
 屋敷では数人の若い男女が忙しそうに動き回っていた。その内の一人、短い金髪をツンツンに逆立てた女が二人に気付いてやってくる。

「おやぁ? レイニーじゃん、久しぶりー。そっちは?」

 小さな包みを大切そうに両手で持って尋ねてくる。レイニーは一度マキを振り返った。

「マキって言って、一緒に旅をしてるの」

 彼女に紹介され、マキは頭を下げて人の良さそうな爽やかな笑みを浮かべた。その光景に女は頬を紅潮させ、目を輝かせる。
 どうやら綺麗なモノが大好きな彼女は、マキの笑みに見事にやられたらしい。

「へぇー、マキ! あたしはネリアって言うんだ。丁度今美味しいケーキを買ってきたところなんだけど、良かったら一緒にお茶しない?」

 手に持っている包みを見せながら一方的にまくし立て、返事も聞かずにマキの腕を取って、玄関ホールの右手にある食堂へと引っ張っていく。

「えっ!?」

 助けを求めようとマキがレイニーを振り返るが、レイニーは苦笑いを浮かべていただけだった。

「あ、ネリア。カレン来てる?」
「部屋にいるわよ」
「ありがと」

 短く礼を言ってレイニーは正面の階段へ足を向ける。マキは既に観念したのか、大人しくネリアに手を引かれて食堂の中に姿を消した。



 階段を上り、廊下を左に進む。一番奥の部屋が目的の人物がいる場所だ。
 質素な木の扉を軽く叩いて声をかける。

「カレンいる? あたしだけど」

 しばらく待つと、内側からゆっくりと扉が開いた。部屋の中からひょろりと手足の長い青年が不機嫌そうな表情を浮かべて顔を出した。
 今まで寝ていたのか、耳の下で切り揃えられた金の髪が所々はねていた。
 ちらりと左耳に目をやると、金のイヤリングが窓から差し込んだ日の光にキラリと輝いた。

「何の用だよ……」

 眉間に皺を寄せ、目つきの悪い青い目を更に細め、頭を掻きながら低い声で尋ねてくる。レイニーはその態度は見慣れたものなので、気にもせず答えた。

「カナムーン国王命令。お城に来いって」
「断る」

 即答。そして用は済んだとばかりに扉を閉めようとした。
 レイニーは慌ててブーツの爪先を滑り込ませて、扉が閉まらないように阻止した。

「ちょっと! 人の話は最後まで聞きなさいよ!」
「うるせぇな! 大体国王命令より、他に言う事があるだろうが!」

 怒鳴り返されてレイニーは首を傾げた。だがすぐに思い当たり、パンッと手を叩いた。

「ああ、“ただいま”? “お土産はないわよ”?」
「お前なぁっ!!」

 レイニーの見事なボケにカレンは絶叫した。

「もういい! 俺は寝る!」

 そう言って扉から手を離し、寝台へと向かう。レイニーは慌てて彼の服を掴んだ。

「お願いカレン! 話しておかないといけない事もあるし……」

 レイニーに縋り寄られ、カレンはしばらく彼女を見下ろしていたが、盛大な溜息を吐いて前髪をかきあげた。

「仕方ねぇな……。それで話って何だよ?」
「あ、食堂でいい? 連れがそっちにいるから」

 尋ねながらレイニーが部屋を出る。カレンは素直に頷いて彼女の後をついていった。



 ネリアに拉致されたマキは、楽しそうに彼女とお茶をしていた。そのテーブルにレイニーとカレンはお邪魔し、ネリアに席を外してもらう。
 食堂を出て行く前にネリアが淹れてくれたお茶を一口飲んで、レイニーは前の日タナから聞いた事を二人に話した。

 一通り話し終えてレイニーはお茶を飲む。そしてカップ越しに二人の様子を窺った。
 案の定というか、カレンは不機嫌さ全開の顔をしてカップを睨みつけており、マキは前もって予想していたのか特に驚いてはいなかった。

「昨日第二王女の肖像画を見て気付いてたけど、本当にレイニーがこの国の王女だったなんて……」

 額に手を当て、溜息を吐きながらマキが呟く。レイニーは何だか自分が悪い気がして、乾いた笑みを浮かべるしかなかった。
 不意にカレンが立ち上がる。つられてレイニーは顔を上げた。

「どうしたの?」
「着替えてくる。城に行かないといけないんだろ? 国王命令だし」
「……さっきはその命令を無視しようとしたクセに」

 ぼそっとレイニーが反論すると、カレンが睨みつけてきたので慌てて目を逸らした。

「きちんと会って話しておかないとな。王子だとかは勝手に言って構わないが、今の生活は変える気はないってな」

 そう言ってカレンは食堂を出て行く。レイニーもそれは同じだったので何も言わなかった。
 ちらりとマキに目をやると、彼はどことなく落ち着かない様子で窓の外を眺めていた。
 無理もない、とレイニーは内心溜息を零した。数ヶ月一緒に旅をしていた相手が実は王女様だったのだ。

 今年の王女の誕生日祝いの祭りは、まだまだとんでもない事が起こりそうな気がする。
 レイニーは嫌な予感を振り払うように、小さく頭を振ってお茶を飲み干した。




 カナムーン城に到着すると、待っていたのかタナが三人を出迎えてくれた。
 軽く挨拶を交わした後、タナがこう言った。

「国王陛下がお待ちです」

 彼に案内され、辿り着いたのは国王の執務室だった。

「げっ、ライローグ……」

 部屋に入った途端、そこに居た人物を見てカレンが嫌そうな声を上げる。
 執務机の側には金の髪を短く刈り上げている背の高い男が立っており、一同に目をやると軽い調子で「よっ」と片手を上げた。
 最後に部屋に入ったタナが静かに扉を閉めると、書類に目をやっていた国王がペンを置いて立ち上がった。

「全員揃ったな」

 一同の顔を見渡して口を開く。その声に四人は姿勢を正した。

「ライローグ」
「はい。お前たち四人には、これからドイル伯爵領地の町に行ってもらう。そこで起きている事件を解決してくるように」
「はぁ?」

 いきなりの事で理解できなかったカレンが、素っ頓狂な声を上げて聞き返す。しかしライローグは話は終わりだとばかりに四人を追い出した。

「現地でお前たちを待ってる奴がいるから、そいつから詳しい話を聞いてくれ。ほら、行った行った」

 ぐいぐいとライローグに背中を押され、四人は部屋から押し出される。

「健闘を祈るよ」

 と、ひと言だけ言って、バタリとライローグは執務室の扉を閉めた。
 一拍の間の後、カレンとレイニーの抗議の悲鳴が城内に木霊したが、執務室への扉は硬く閉ざされたままだった。





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